ソイ「ソワちゃん。この前、”予防は健康の積み立て”って話をしたよね。でも正直、まだピンときてない人もいると思うんだ。」
ソワ「そうだね。”積み立てが大事”って言われても、積み立てなかったら実際どうなるの?ってところが見えないと、人はなかなか動けないものね。それじゃあ、少し現実的な話をしようか。健康と、お金の話。」
健康寿命と、平均寿命の”差”
「平均寿命」という言葉はよく聞きますが、「健康寿命」という言葉はご存じでしょうか。 健康寿命とは、日常生活に制限なく、自分の力で生活できる期間のことです。厚生労働省が公表した令和4年(2022年)のデータによると、日本人の平均寿命と健康寿命には、次のような差があります。 男性は、平均寿命81.05年に対して、健康寿命は72.57年。その差、約8.5年。 女性は、平均寿命87.09年に対して、健康寿命は75.45年。その差、約11.6年。 この「差」が意味するのは、人生の最後のおよそ8年〜12年は、なんらかの形で日常生活に制限がかかる可能性がある、ということです。 つまり、ただ長く生きるかどうかではなく、「自分の足で、自分の意思で動ける時間がどれだけ続くか」。ここに、健康寿命という言葉の本当の意味があります。 (出典:厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」令和6年12月)
その”差”の期間に、かかるお金
では、自分だけでは動きにくくなった期間には、どれくらいのお金がかかるのでしょうか。 生命保険文化センターの調査(2024年度)によると、介護にかかる費用の平均は次の通りです。 住宅改修や介護ベッドの購入といった一時的な費用が、平均47.2万円。 月々かかる費用が、平均9.0万円。 そして、介護を行った期間の平均は、55.0カ月。およそ4年7カ月です。4年を超えて介護をした人は、約4割にのぼります。 ここで一つ、知っておきたいことがあります。「平均9.0万円」と聞くと、そのくらいかと思うかもしれません。ですが、月々の費用でもっとも回答が多かった価格帯は、実は「15万円以上」です。平均という数字は、少ない人と多い人をならしたもの。実際には、それ以上かかっているご家庭も、少なくないのです。 これらをならして考えると、介護には数百万円規模のお金がかかりうる、というのが一つの目安になります。もちろん、これより少なく済む人もいれば、期間が長引いてもっとかかる人もいます。
(出典:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査[2人以上世帯]」2024年度)
医療費の負担も、変わってきている
もう一つ、押さえておきたい現実があります。医療費の負担が、少しずつ重くなる方向に動いていることです。 これまで、75歳以上の後期高齢者の医療費の窓口負担は、多くの方が1割でした。ですが令和4年10月から、一定以上の所得がある方は、負担割合が2割に引き上げられています。対象となるのは、後期高齢者のおよそ2割の方です。 さらに、この引き上げにともなう負担増をやわらげるための配慮措置も、2025年9月末で終了しました。 そして近年は、所得に応じた負担のあり方を見直し、2割・3割負担の対象を広げてはどうか、という議論も国の審議会で進められています(2026年時点では検討段階であり、決定した内容ではありません)。今後どうなるかは分かりませんが、少なくとも「負担が軽くなっていく」方向ではなさそうだ、ということは言えそうです。 つまり、「歳を重ねれば、医療費の負担は軽くなる」とは、必ずしも言えなくなってきているということです。未来の負担が、今より軽くなる保証はありません。
(出典:厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等について」、財政制度等審議会 2026年4月建議 ほか)
「働ける期間が1年延びたら」で考えてみる
ここまで、少し肩の重くなる数字が続きました。だから今度は、逆の方向から眺めてみます。 もし、元気に働ける期間が1年延びたとしたら――その1年に、どれくらいの価値があるでしょうか。収入という意味でも、やりたいことができるという意味でも、その価値は、決して小さくないはずです。 その1年のために、日々のメンテナンスにかける時間やお金があるとすれば、両方を並べて眺めてみる。どちらが大きいかは人それぞれですが、「予防に手間をかけることには、こういう前向きな側面もある」という見方は、できると思うのです。 念のためお伝えしておくと、これは「体のケアをすれば、医療費が減る」「働ける期間が延びる」と約束する話ではありません。体のことに、そんな単純な因果はありません。あくまで、「予防という考え方には、こういう経済的な側面もあるらしい」という、判断材料のひとつとして受け取っていただけたら、と思います。
Soi が思っていること
こうして数字を並べると、ちょっと不安を煽っているように聞こえたかもしれません。でも、私の狙いは脅すことではなくて、”知る”ことをきっかけに、あなた自身が選べるようになることです。 前回の『健康の積み立て』でもお伝えしたとおり、大切なのは「今を楽しむこと」と「未来に備えること」の、自分なりのバランスです。数字はそのバランスを考えるための材料であって、正解ではありません。 だから、知ったうえで「今はこのままでいい」と思うなら、それもひとつの立派な選択です。もし「何か少し始めてみようかな」と思ったとき、そのなかに体のことも、そっと入れてもらえたら――そして、いつか誰かに隣で見てほしくなったときに、Soi(ソイ)を思い出してもらえたら、うれしく思います。
ソイ「なんとなくで終わってたけど、数字で見ると、急に自分ごとに感じるね。」
ソワ「でしょ? でも忘れないでね。数字はあくまで”きっかけ”。決めるのは、そこのあなた自身だよ。知ったうえで、今日をどう過ごすか――さあ、どうする?」